歯ぎしりは、日本人の約70%の方々が経験していると言われています。しかし、多くの人は無意識で歯ぎしりをしているため症状を自覚している方は多くありません。
歯ぎしりを放置しておくと、健全な歯の摩擦や消失などの口腔トラブルが引き起こされるほかにも、頭痛などの全身の健康を害する場合もあります。
この記事を読んで、歯ぎしりが発生する原因とその改善方法をしっかりと理解し、その上で対策を行ってみて下さいね。
無意識な歯ぎしり・食いしばり
歯ぎしりとは、歯をギリギリと擦り合わせたり、過度に噛みしめたりする行為を指します。
一口に歯ぎしりと言っても、歯ぎしりの様子やどんな時に歯ぎしりが起きるのかで症状や改善方法も変化していきます。まずは、自分がどのような歯ぎしりをしているのかを理解したうえで原因を究明し改善していきましょう。
歯ぎしりの種類
歯ぎしりは大きく3つの種類に分けることが出来ます。
- グラインディング
- クレンチング
- タッピング
それぞれのタイプによって症状が異なるので詳しく紹介ていきます。
グラインディング
患者さまの中で最も多い歯ぎしりがこの「グラインディング」です。
グラインディングは、歯を擦り合わせるもので、ギリギリと音をする場合が多いです。また、この歯ぎしりは、歯に大きなダメージを与えるため、削れや擦り減りによって歯が平らになる特徴があります。
クレンチング
クレンチングは、上下の歯を強く噛みしめるものを言い、食いしばりや噛みしめとも言われています。
クレンチングは、患者さまが自覚症状がなく行われているケースがとても多いです。その理由は、グラインディングのように歯の擦り合わせをしないので音が出ないためです。
しかし、無意識に歯を強くくいしばっているため、知らず知らずのうちに歯を削ってしまっています。上下の歯の噛み合わせが薄くなったり、頬の筋肉が硬く発達している等、このような症状が見られたらクレンチングの可能性があるでしょう。
タッピング
タッピングは、上下の歯を噛み合わせカチカチと音を鳴らすものを言います。
グラインディングやクレンチングほど力が強くないため、歯や顎に対しての影響は少ないですが、改善する必要があるでしょう。
睡眠時ブラキシズムと覚醒時ブラキシズム
歯ぎしりの種類は先程挙げた3つに分けられますが、歯ぎしりのタイミングによっては「睡眠時ブラキシズム(寝ている時に起こる)」と「覚醒時ブラキシズム(目覚めている時に起こる)」に分けることが出来ます。
睡眠時ブラキシズム
睡眠時ブラキシズムは、睡眠中に起こる歯ぎしりのことを指します。患者さまの無意識下で行われており、自覚症状がない場合も多いです。睡眠時ブラキシズムを繰り返していると、歯や顎に悪影響を及ぼすだけではなく、熟睡をすることが出来ず不眠の原因にもなります。
覚醒時ブラキシズム
覚醒時ブラキシズムは、起きている時に起こる歯ぎしりのことです。癖として無意識的に行っていることが多いです。
睡眠時ブラキシズムと覚醒時ブラキシズムは、いずれにしても両方あまり本人の自覚がないことが多いので、中々ご自身の力で改善するのは厄介でしょう。
セルフ歯ぎしりチェック
これまでに申し上げたように、歯ぎしりは無意識に行っている場合が多いため、患者さま自身の自覚がない場合がほとんどです。
そこで皆さん、セルフ歯ぎしり診断を行ってみて下さい!以下に当てはまる項目が多いほど、歯ぎしりや噛み締めをしている可能性が高いです。お早めにドクターに相談してみて下さいね。
□ 起床時に口元が疲れている
□ 頬の内側や舌に歯跡がついている
□ 歯のすり減りやひび割れがある
□ 歯の詰め物が取れやすい
□ 原因不明の頭痛や肩こりがある
□ 冷たいものが歯にしみる(知覚過敏)
□ 集中している時に上下の歯が当たったり、食いしばったりしている
□ 家族や友人から歯ぎしりを指摘された
歯ぎしりをする原因5選
歯ぎしりが発生するメカニズムは未だ正確には解明されていません。しかし、以下に挙げられる要因が影響している可能性が高いと言われています。
自分はどれに当てはまっているのかチェックし、改善できるものは今日から意識して変えていきましょう。
過度なストレス
歯ぎしりの原因に最も多いとされているのが「ストレス」です。
生活中に感じるストレスを発散する方法として、身体が無意識的に歯ぎしりをしてしまうようになっています。ストレスを感じずに過ごすことはとても難しく、無理に近いことです。しかし、ストレスを伴う歯ぎしりによって歯が擦り減ったり、肩こりがひどくなってしまう場合は、早めに対策をし改善する必要があります。
飲酒やタバコ
アルコールやタバコは質の良い睡眠を妨げます。アルコールやタバコを日常的に摂取している方々は、それにより睡眠が浅くなり、歯ぎしりを起こしている可能性があります。
禁酒や喫煙をすることは難しいかもしれませんが、それが歯ぎしりの原因になっているという事を自覚して、意識的に少しずつ減らすなど、心掛けていきましょう。
歯並び・噛み合わせのズレ
上下の歯の噛み合わせが悪かったり、歯並びがズレていたりすると歯ぎしりを起こしやすくなります。具体的には、歯の成長や歯科治療(虫歯・歯周病等)、老化等によって歯並びや噛み合わせは変化し続けます。その変化を歯ぎしりによって調節しているのです。
日常生活や歯科治療後に違和感を覚えることがあったら、すぐにドクターに相談するようにして下さい。
また、歯並びや噛み合わせのズレは、歯ぎしりだけの問題ではなく他にも多くの悪影響があります。こちらのブログ記事も合わせて読んでみて下さいね。
食いしばりの習慣化
歯ぎしりが癖になっていることも原因に挙げられます。
皆さん、軽く口を閉じてみて下さい。その時に、上下の歯は当たっていますか?当たっていませんか?
通常、口を閉じている時に上下の歯は数ミリ開いています。しかし、これが合わさってしまっている方は日常的に歯ぎしりや食いしばりを行っている可能性が高いです。また、力仕事で食いしばる癖がついていたり、集中するときに歯を噛み合わせる癖がある人も一定数おり、それが夜に歯ぎしりとなって現れてしまいます。
子供特有の症状
歯ぎしりは大人だけではなく子供にも起こります。
子供の歯ぎしりは、生後6か月頃から始まり、中学生ぐらいまで続くこともあります。ただし、子供の歯ぎしりは次に生えてくる歯の位置や顎の位置を決める生理現象なので心配をする必要はありません。
しかし、あまりにも強く歯が書けてしまうということであれば対策を打つ必要があるでしょう。
悪影響がこんなに?歯ぎしりの放置は危険
歯ぎしりは、口や歯の健康だけではなく全身に悪影響を及ぼす可能性があります。歯ぎしりで加わる力の強さは自分の体重以上と言われています。それが自分の歯や顎にかかると一体どのような悪影響があるのでしょうか。場所を分けて詳しく解説していきます。
歯
歯ぎしりをすると、歯には本人の体重かそれ以上の負荷がかかると言われています。つまり、男性であれば約60キロ以上女性であれば約40キロ以上の力が歯に加わっていることになりますね。それだけ歯に負荷をかけていると、様々なトラブルが起こります。
歯ぎしりが習慣化すると、歯が徐々に摩擦されていき噛み合わせの凹凸が失われます。これにより、噛み合わせの機能が低下し、食べ物が上手く噛みにくくなるだけではなく、顔・表情の歪みにも繋がります。
また、歯ぎしりによって歯の表面にあるエナメル質が削られていくと知覚過敏という病気にも繋がります。
知覚過敏とは、冷たいものを飲食した際に歯にしびれを感じる病気です。重度になると、歯ブラシの毛先が触れたり、風にあたったりするだけで痛みを感じるようになります。
このように歯ぎしりによって歯の擦り減りが見られた場合は、放置すると危険なので早めにクリニックを診療するようにして下さい。
歯茎
歯ぎしりは、歯を支える歯茎にも悪影響を及ぼします。強い力が加わることで歯が揺さぶられ、歯と歯茎の間が広がっていき、細菌が入り込みやすい状態になります。細菌が入ることで、歯茎が炎症し歯周病を起こす場合があります。
顎
歯ぎしりは顎関節にまで過剰な負担をかけてしまい顎関節症を引き起こす可能性があります。起床時に、顎に痛みを感じたり、違和感をおぼえる場合は注意してください。顎関節症は口が開けにくくなったり、悪化すると食事や会話に支障をきたすこともあります。
全身
歯ぎしりの影響は、口や顎に留まらず全身に出現します。具体的に、歯ぎしりや食いしばりによる全身への影響は下記のようなものがあります。
・頭痛
・首の痛み
・肩こり
・腰痛
・ひざの痛み
このようなことが起こる原因としては筋肉の緊張状態が影響しています。
歯ぎしりや食いしばりを行うことにより、頭やその周辺の筋肉が緊張状態になります。その影響で頭痛や肩こりが生じます。また、通常顎を動かすときは左右同じ力で動かしますが、歯ぎしりや食いしばりでは、この力が同一ではなく、噛む力が偏ってしまいズレが生じてしまいます。人間の身体は一部のズレを他の部分で修正をしようとします。これにより、ズレが頭部から肩、背中、腰、ひざと連鎖的に生じてしまいます。
その他
歯ぎしりや食いしばりによって顔が大きくなってしまう可能性もあります。顔が大きくなるのは男女を問わず嫌な事だと思います。なぜ顔の肥大化が起きるのかを理解し、しっかり対策していきましょう。
小顔になるためには「歯の食いしばりはご法度」などと言われてもいます。歯を食いしばると咬筋(こうきん)という頬骨からフェイスラインにかけて存在している筋肉を過度に使用してしまいます。これにより、筋肉が発達し顔が横に広がりエラが張った状態になります。また。その状態は老廃物が溜まりやすくむくみが起こり顔が大きくなってしまいます。
解決方法3選|症状と原因を理解しよう
繰り返しにはなりますが、歯ぎしりがなぜ起こるのかの原因は未だ完全には分かっていません。そのため、完治させるということは難しいでしょう。ですが、症状を軽減させたり、歯や顎を守ることは十分に可能でしょう。
歯ぎしりを治すためには、まずは歯医者に行くことが解決の近道です。ただし、仕事で多忙な方や妊娠中・子育て中の方等、なかなか歯医者の時間をを取ることが難しい方もいらっしゃると思います。
そこで、歯ぎしり・食いしばりの治療として歯医者でよく用いられる方法と併せて自宅でもできるセルフケアもご紹介します。まずは自分の出来るところから実践してみて下さい。
ナイトガード
歯ぎしりや食いしばりの治療で一般的に行われている治療法は「ナイトガード」を使用する方法です。
ナイトガードとは、睡眠時に使用するマウスピースのことです。これを装着して眠ることで上下の歯が直接当たるのを防ぐことができ、歯の擦り減りを防ぐのはもちろん、顎にかかる負担やカチカチという不快な音を軽減することが出来ます。また、ナイトガードの種類によっては歯ぎしりの回数を減らすこともできます。
使い心地は、装着したての頃は多少違和感はあるかもしれませんが、慣れてしまえば気にならないという患者さまがほとんどです。また、保険適用が可能なので、治療にかかる費用も数千円~1万円程度で済みます。
睡眠中の歯ぎしりや食いしばりで悩んでいる方は是非検討してみて下さい。
質の良い睡眠
セルフケアとして行えるものには、質のよい睡眠を心掛けることも重要です。睡眠の質をしっかりと高め、熟睡をすれば歯ぎしりを防止することが可能です。
その為には、就寝前の行動が重要です。寝る直前までスマホやTVを見ていると、脳が覚醒してしまい睡眠も浅くなります。また、アルコールも睡眠の質を下げる要因ですので避けるようにして下さい。
質の良い睡眠を心掛け自分自身で歯ぎしり・食いしばりを改善していきましょう。
ストレスの緩和
歯ぎしりの原因でもお話したように、歯ぎしりが起こる理由として最も考えられるのがストレスによるものです。その為、歯ぎしりを緩和するためにはストレスを軽減させることが重要になるでしょう。
一概にストレス解消といっても難しいかもしれませんが、軽い運動や日々のストレッチ、趣味の時間をとるなどして自分に合ったストレス解消法を模索してみましょう。適度な運動は、質のいい睡眠にも繋がるので良い方法かもしれませんね。
マウスピース矯正で歯ぎしりが改善できる
マウスピース矯正によっても歯ぎしりの改善を見込むことができます。先程も述べたように、歯ぎしりや食いしばりが起きる原因には歯並びや噛み合わせのズレがあげられます。そこで、マウスピース矯正によってそのズレを解消していきます。
また、マウスピース矯正で歯ぎしりを解消する魅力はそれだけではありません。一緒に見ていきましょう。
マウスピース矯正とは?
まず、マウスピース矯正とはその名の通りマウスピースを使って歯並びを良くする方法です。マウスピースをはめた時に歯にかかる力を利用して歯を動かしていきます。日常的に使用することで、歯並びや噛み合わせをしっかりと整えることができます。
下記のブログ記事では、マウスピース矯正についてそのメリットや弱点も合わせてお話しているので合わせて読んでみて下さいね。
まさに一石二鳥|歯並びと歯ぎしり同時に解決
歯ぎしりの原因に、歯並びや噛み合わせの悪さが挙げられます。歯ぎしりの原因に歯並びや噛み合わせの悪さがある場合は、自分の力では改善できません。
自分がこのケースに該当する場合は、歯ぎしりを改善させる前に歯並びや噛み合わせを改善する必要があり、歯列矯正をすることになります。
また、マウスピース矯正にした場合、歯や歯の詰め物をマウスピースによって保護することが出来るので、歯ぎしりによって歯が擦り減ったりする心配も同時に解消することができます。歯は一度失うと元に戻すことが出来ません。一生ものの歯を大切にしていきましょう。
歯ぎしりを治すために
いかがでしたか?歯ぎしりはストレスや噛み合わせの悪さが原因で生じます。ご自身で原因をしっかり見直して、取り除いていきましょうね。
また、噛み合わせの悪さなどは患者さまだけの努力で改善することはできません。歯ぎしりに悩んでいる方はまずは一度歯科医院に受診し、ドクターに相談してみると良いでしょう。
DPEARLでは、初回カウンセリングを実施しています。この記事を読んで、歯ぎしりや食いしばりが気になった方はもちろん、少しでも歯科矯正に興味をもった方はいらっしゃってください!