マウスピース矯正など、歯科矯正で歯並びを治した後は、ほとんどの場合「リテーナー」という器具の装着を指示されます。
リテーナーは、retain:保つ・保持するという意味からきた言葉で、綺麗になった歯並びを維持するために使う装置です。「矯正って治療したら終わりじゃないの?」と驚いた方もいるかもしれませんね。実は、リテーナーをつけないとせっかく直した歯並びがもとに戻ってしまうんです。
今回は、このリテーナーについて詳しく解説していきます。
マウスピース矯正のリテーナー装着期間
一般的にはマウスピース矯正をしていた期間と同じくらいの期間、つまりおよそ1〜3年間リテーナーを使用すべきとされています。もともとの歯並びによっても変わってきます。
特にマウスピース矯正を終えた直後(=リテーナーを使用し始めたばかりのころ)は後戻りが起きやすいため、必ずリテーナーを使用しましょう。基本的には食事や歯磨き時以外はリテーナーを付けるようにします。マウスピース矯正中とほとんど変わりませんね。
リテーナーを1年以上使用し後戻りが起きにくくなってきたら、就寝中だけ使用し日中は外しても良いです。リテーナーを2〜3年使用しより歯並びが安定してきたら、リテーナーを一切使用しなくて良いこともあります。
マウスピース矯正のリテーナーの種類
リテーナーには大きく分けて2つの種類があります。基本的には付け外しが自由にできるリテーナーが使われますが、そうでないこともあります。
- 自由に付け外しができるリテーナー
ワイヤーとプラスチックでできたものや、透明なマウスピース型のものなどがあります。いずれもマウスピース矯正中と同様、食事や歯磨き時には外すことができ、装置もお口の中も清潔に保ちやすいです。その分効果は頑張り次第となります。 - 歯に固定するリテーナー
ワイヤーを歯に固定することで後戻りを防ぎます。ワイヤーと聞くと見た目が気になりますが、歯の裏側に固定するためほとんど見えません。また付け外しの手間がなく、効果も確実に得られます。ただ食べ物がひっかかったり汚れが付きやすかったりする上、歯磨きがしづらいので歯石が付きやすいです。
特に後戻りが起きやすい部分には固定式リテーナーを使用し、それ以外の部分には自由に付け外しができるリテーナーを使用するのが一般的です。
リテーナーは一生付けなければいけない?
せっかく時間と費用をかけて治した歯並びが元に戻るともったいないですよね。先述の通りリテーナーの装着期間はおよそ1〜3年で、一生付けなければいけないものではありません。ただ可能であれば、その後も使用し続けることが望ましいです。というのも歯並びが安定してきても、お口周りの筋肉や癖、生活習慣などによっても後戻りは起きてしまうからです。
<後戻りが起きやすくなる原因>
- 頬杖
- 舌を前に出す癖
- 唇を巻き込む癖
- 横向き・うつぶせ寝
- 親知らずが横向きに生えている
- かむ力が強い など
その他加齢により起こる歯や歯ぐきの変化も、歯並びが変わる原因となります。癖や生活習慣などを全て改善させるのは難しいため、リテーナーを使用し続けることが望ましいのです。
またリテーナーを使用し続けていれば、きつくなった・ゆるくなったなど装着感の変化によりちょっとした歯並びの変化にも気付きやすいでしょう。その時点で歯科医師に相談できれば、簡単な修正をするだけで済むかもしれません。
マウスピース矯正のリテーナートラブル3選
マウスピース矯正中と同様、リテーナーは自由に付け外しができる装置だからこそトラブルも起きやすいです。よくあるリテーナーのトラブルと、それぞれの対処法を解説します。
①リテーナーが合わなくなった
リテーナーの装着を忘れていたなど、一定期間あいた後にリテーナーを付けると、きつかったり痛かったりすることがあります。以前は普通に付けられていたリテーナーが合わないということは、後戻りや歯並びに変化が起きているということです。多少きつさや痛みを感じても、徐々に慣れてくるようであれば問題ありません。マウスピース矯正中のように、リテーナーを付けることで歯に力をかけ、元の歯並びに戻すことができます。
ただリテーナーが浮いている感じがしたり歯並びにぴったり合う感じがしなかったりする場合は、一度歯科医院に連絡してみましょう。場合によっては矯正をやり直す必要があるかもしれません。
②リテーナーが壊れた・取れた
- リテーナーにヒビが入った
- リテーナーが割れた
- 毎日使用しているのに合わなくなった
- 固定式のリテーナーが取れた など
このような場合はまず歯科医院に連絡しましょう。リテーナーは歯並びを維持するため、ぴったりフィットするように作られています。ちょっとした破損でも歯並びに影響の出る可能性があるため、まずは相談しましょう。自分でくっつけたり直したりしないでください。
③リテーナーをなくした
リテーナーをなくしてしまった場合も、まずは歯科医院に連絡しましょう。特にマウスピース矯正を終えた直後(=リテーナーを使用し始めたばかりのころ)は歯並びに変化が起きやすく、半日〜1日リテーナーを付けなかっただけで後戻りが起きたということも。放置は禁物です。
マウスピース矯正のリテーナー管理方法
リテーナーの管理方法は、基本的にマウスピース矯正の装置管理方法と同じです。以下4つを意識しましょう。
- 外した後は水かぬるま湯で洗う
- 軟らかい歯ブラシで洗い、歯磨き粉は使わない
- 1〜2日に1回はリテーナー洗浄剤に浸ける
- 洗浄後は乾燥させ、専用ケース内で保管する
外した後は水かぬるま湯で洗う
リテーナーが変形する可能性があるため熱いお湯は使わず、水かぬるま湯で汚れを洗い流します。リテーナーの内面(くぼんでいる部分)やワイヤーが曲げられている部分、歯ぐきと接触する部分などは特に汚れが溜まりやすいので、丁寧に洗いましょう。
軟らかい歯ブラシで洗い、歯磨き粉は使わない
基本的には指で洗い、汚れを落としきれない部分は軟らかい歯ブラシを使います。硬い歯ブラシはリテーナーを傷付け、かえって細菌が付きやすくなるため使用しないでください。歯磨き粉も含まれている研磨剤によりリテーナーを傷付けてしまうため、使用しないでください。
1〜2日に1回はリテーナー洗浄剤に浸ける
水では落としきれない汚れや細菌も、洗浄剤を使えば落とすことができます。1〜2日に1回は使用するようにしましょう。洗浄剤はドラッグストアや通販サイトで購入することができます。
専用のリテーナー洗浄剤が望ましいですが、なければマウスピース洗浄剤や入れ歯洗浄剤でも代用できます。
洗浄後は乾燥させ、専用ケース内で保管する
洗浄後はリテーナーの破損や紛失を防ぐため、専用ケース内で保管しましょう。専用ケース内にティッシュなどを敷き、その上で乾燥させるのがおすすめです。外出時なども専用ケースに入れて持ち歩くようにします。
もし後戻りが起きてしまったら?
リテーナーを使用しなかったことにより後戻りが起き、修正が難しいと判断された場合は再治療(歯科矯正をやり直す)となります。一からやり直しではなく、以前行なっていたものよりも簡単な矯正で済むことがほとんどですが、費用や時間がまたかかってしまいます。このようなことにならないよう、リテーナーをしっかり付けるようにしましょう。